2006/5/23
9:00 - 14:00

翌朝もマドリッドは快晴

朝9時に目を覚ますとクレアはまだ寝ていました。僕がゴソゴソと起き出した物音で目を覚ましたクレア。相変わらず朝は強烈にテンションが低い彼女を誘い、ホテルの朝食を食べに行きました。

僕は昨日、近くに同じ値段で泊まれるシングルのホテルを見つけてきたのでそこに移る予定でした。一方クレアは今夜、早くもフランスへ帰国します。列車の発車時刻を聞くと夜の11時。

 僕 「それまで外にいるの?」
クレア「まだどうするか決めていない…」

地元の駅に着くのは明日の夕方だというし、僕はもう一泊分払って、夜までベッドをキープした方がいいよと薦めました。

しかしそんな僕の助言を聞いていたのかいないのか、彼女は僕と一緒に荷造りを始め、結局、一緒にユースホステルをチェックアウトしました。何だかこのまま放っておく訳にも行かないし、彼女は僕をここまで連れてきてくれた人でもある。出来れば帰りは駅まで見送ってあげたいと思っていました。

そんな訳で、僕が押さえていた安宿のおばちゃんに彼女を夜まで部屋にいさせてもいいかと交渉し、シングル料金に僅かに上乗せする事でその許可を得ました。部屋の鍵も二つ用意してもらい好きな時に戻ってくればいいよと、彼女に鍵を渡しました。

明らかに快適になった僕らの部屋。彼女は気持ちのよい日差しの差し込む部屋のベランダから暫くボケーッと外を眺めていました。

そしてふと僕の方を振り返り「私もここに泊まりたかった…」と、言いました。

ここまでしてあげる必要はないのでは?と、何度も思いましたが、何だかんだいっても彼女は僕を頼りにしているようだし、僕がこの街で観ておきたい物はもう何もありませんでした。折角、出会ったのは何かの縁。一緒にいる事はそれ程苦痛では無かったし、僕のマドリッドは彼女との出会いで予想以上に面白くなっていたので、これは最後まで彼女を見送るべきだと腹を決めました。今日は僕の方から「一緒に行ってもいい?」と彼女に頼み、二人で街へ繰り出しました。


全くオシャレ情報が無い外国人二人組

買い物となると、俄然元気が出てきたクレアの後に続き、二人でマドリッドの繁華街を歩き回っていました。どうやら彼女にはお目当てのお店があった様ですが、結局、そのお店は見つけられずに近くにあった渋谷109的なお店で洋服を買いました。僕はてっきりもうちょっと高くて上品なお店を探しているのかと思っていたのですが、彼女はまだ19歳。クラブが大好きと言っても、僕とは大分、かけ離れた世界で遊んでいるんだろうなぁと、少し歳の差を感じました。

お目当てのお店を見つけられなかった彼女ですが、このお店でパンツを買った事で大満足している様子でした。よーしこの調子!と、次はどこ行こうか?と尋ねると、何と買い物はもう終わりだという返事が返ってきました。

え?もう終わり?

まだ1時間しか経っていない。何でも彼女は母親から20ユーロ(2800円)まで買い物をしていいとクレジットカードを渡されたそうで、たった今買ったパンツは19ユーロ。もうその上限に達してしまったので、他には何も買えないという事でした。

それなら仕方無い。じゃあ昼飯でも食うか?と言うと、今度は「もう、ご飯を食べるお金も残っていない」という驚きの答えが返ってきました。

えーーー!!

僕はこの時、てっきりどこかのお嬢様だと思っていた彼女が、実は本当にオーディションを受ける為のギリギリのお金だけを親から渡され、フランスの片田舎からスペインにやって来た事を知りました。これでお金の事になるといつも曖昧な返事しかしなかった理由がようやく分かりました。

普通は人生で一番大切な日にユースホステルのドミトリーなんて泊まらないか…貧乏旅行なら僕の得意分野だったのに…

とは言え、僕は腹ぺこだったので、昼飯くらい奢るよと、近くにあったファーストフードに入りました。

ーーーーーー ここが僕らにとっての運命の分かれ道 ーーーーーーー

大通りに面したファーストフードのテラスで遅めの昼ご飯を食べました。ここに来てようやくお互いの状況が分かって来た事で、今まで遠かった僕らの距離がググッと縮まった様な気がしました。

後は夜を待って彼女を見送るだけ…

しかし、人が増えて来たお店を出ようと席を立ったその時、事件は起こりました。