いよいよ世界遺産、マチュピチュに最も近い村、アグアスカリエンテスまでやって来ました。完全なる山奥にあるこの村からも、まだその姿を見る事は出来ませんが、ここからマチュピチュまではシャトルバスで20分。僕らは今、世界でマチュピチュに最も近い場所にいます。
5時半起きで宿を出て、小雨の降る中をマチュピチュ行きの電車が出る、ワンチャック駅へ向いました。まずはそこからバックパッカーズ号と名付けられた青い電車に乗り込み、マチュピチュの最寄り村、アグアスカリエンテスまで4時間の電車の旅。車内は世界各国の旅行者達で大賑わいで、日本からツアーで来ている旗を持った団体客も同じ電車に乗っていました。この電車はマチュピチュへ向う観光客のみが乗り込む特別列車で(旅行者は普通電車に乗る事が出来ません)全席指定なのですが、座席が4人で向かい合う形で設けられています。恐らくペルー人用に作られているこの座席は間が滅茶苦茶狭く、前にいる人と完全に膝がクロスしてしまうくらい窮屈でした。揺れも激しく、決して快適とは言えない電車でしたが、険しい山々の間を縫って川沿いに走る電車からの景色は中々、見応えがありました。果てしなく続く大自然の景色。雨期で推量の上がったウルバンバ川は落ちたら一瞬で飲み込まれてしまいそうな程、流れが激しく、その向こうでは先住民族の人々が山奥でのんびりと生活している光景が見えました。
アグアスカリエンテスはマチュピチュが無ければ完全に孤立していた山奥の小さな村です。見所といったら温泉があるくらいで(眺めのいい露天風呂なのですが、ぬる過ぎて入れません)、のんびりとした、静かな村です。恐らくこの規模の村で、こんなにたくさんの観光客が訪れる村は世界でここだけだと思います。その分、物価は少し高めですが、村には1泊70ドルの高級ホテルから1泊5ドルの安宿まで様々なタイプのホテルが軒を連ね、観光客向けのお土産屋、いい感じのレストラン、そして、インターネットカフェまでありとあらゆるモノが揃っています。とは言ってもここは回りを全て山に囲まれた本当の山奥。
帰りの日が決まっているので、もし、この村が詰まらなかったらどうしようと不安だったのですが、山の斜面にへばりつく様に作られた小さな村は、まるで日本の温泉街の様な雰囲気で、ちょっと歩いただけで、二人でここに来て良かった事を確信しました。僕らは何件か安宿を回って眺めが最も良かった1泊20ソル(700円)のチェックイン。部屋は風呂トイレ付きだし、フロントのおばちゃんも中々イイ感じの人なので、リョウ君と一緒の3日間が更に楽しく過ごせそうです。
その後は地元の安食堂で労働者に混じって定食を食べ、民芸品を売るお土産物屋のマーケットを冷やかしに行きました。リョウ君はアパレル関係の仕事をしているだけあって、インディへナの作った民芸品を「これは友達用」とか、「これはロンドンの家用」とか、「これは実家に送る用」等と選別しながら、山の様に買います。既に段ボール4箱分も荷物を送っているそうです。確かにインディへナの伝統技術で作られたこれらの品は、村毎にとても個性があって奇麗だし、実際、役に立つ物が多くあります。僕も旅を始めた頃は全く買おうなんて考えていませんでしたが、南米に来て彼等の生活スタイルと民族衣装の素晴らしさに心を打たれ、段々と興味が湧いてきてしまいました。しかも、これらの品はちょっと移動しただけでデザインや色が変わってしまうので、いいと思った物があったらその周辺で買わないと、手に入れるのが難しくなってしまいます。これは必要と判断した物は我慢出来ずに買ってしまいましたが、ただでさえ荷物が重い僕にはこれ以上の買い物は出来そうにありません。
そんな訳でリョウ君の後ろのくっついて歩いていただけのですが、スペイン語が殆ど話せないのに勢いだけでコミニケーションを取ってしまうリョウ君を見ているだけで、お腹いっぱい楽しめました。本当に誰彼構わず突進していくリョウ君には感心します。しかも、どこに居ても確実に目立ってしまうので、どこでもすぐに友達を作ってしまいます。彼を見ていると大事なのは言葉じゃないとつくづく思わされます。