そう思ってやって来たプシュカルですが、今日もインド人にやられまくって本当にクタクタです。このままでは人間不信に陥りそうな予感。
プシュカルへは直行で行けるバスが無く、手前のアジメールという町までバスか電車で来て、そこからバスかタクシーに乗り換えなければなりません。僕が乗ったバスもアジメールまでで、着いたのは朝の4時半。大きな幹線道路沿いでバスを降ろされると、早速、タクシーやリキシャの運転手が集まって来ました。彼らの目的はプシュカルの宿まで旅行者を運び仲介料を取る事で、値段も驚く程高い。僕はパブリックバスでプシュカルヘ向うつもりだったので、バスターミナルまで20キロあるぞ!という彼らの助言を無視して何となくの方向へ歩き出しました。
しかし歩いても歩いてもバスターミナルは現れませんでした。よーく見ればその辺で寝ている人も居たので、最悪一緒に寝れば良いかと始めは余裕だったのですが、警戒心剥き出しで吠えまくる野良犬に何度も行く手を阻まれ、リキシャに乗る事を決心しました。たまたま通りかかった現地人が相乗りしているリキシャに拾われ本当に20キロ近くあったバスターミナルまで無事到着。
この距離を歩いていたら…
そこからパブリックバスに乗ってプシュカルに着いたのが6時過ぎ。またもや降りた瞬間に囲まれた客引きの一人を選びホテルを決めました。
僕はジャイサルメールで一度、客引きをやって以来、彼らに対する考え方が少し変わりました。中には旅行者をカモにしようとしている奴もいると思いますが、恐らく殆どは本物の客引き。1泊100ルピー(280円)の部屋を貸す為に毎朝5時起きしたり、隣町まで出掛けて行く彼らの話にこれからはもう少しだけ耳を傾けてみる事にしました。
という訳で、一番人の良さそうなオッさんに付いて行ったのですが、このオヤジは僕が部屋を決めるまでの僅か10分足らずの間に3つもウソをつきました。
オヤジの嘘 その1
宿から湖が見えると言ったのに全く見えない。
オヤジの嘘 その2
全室バルコニー付きだと言ったのに僕の部屋にはバルコニーが無い。
オヤジの嘘 その3
バルコニー付きの部屋は全て2階で2階だと料金が倍以上高い。
しかしこれくらいの嘘は恐らくインド人なら誰でもつく嘘で、結果的に泊まった客が何も文句を言わなければ彼らに取ってどうでも良い事なんだと思います。僕もそこまでパーフェクトな部屋がある訳が無いと思っていたのですが、案内された部屋の様子を見てどうも納得がいかず、やはり違う宿も見たいと話をしました。すると今度はこの部屋の素晴らしさを力説し始め、うちの売りはマットレスだとベッドに座る様指示されました。
確かに違う!
インドの安宿のベッドは本当に固く、ベニア板の上に布団を一枚敷いた程度の物ばかりです。クタクタで部屋に辿り着き、やったー!!とベッドにダイブして思いっきり腰骨を強打する事件がこれまで何度もありました。
これにはさすがに僕も納得してしまい、おまけに今日の一泊分も無料だと言われあっさりとここに決めてしました。それにまだ朝6時過ぎ。オヤジが出て行った後にそのままベッドにダイブし、ようやく快適な眠りに就きました。
お昼前に目を覚まし、街歩きに出掛けました。真っ先に向ったのはやはり湖でした。インドと言えばガンジス川で沐浴というイメージがありますが、ここプシュカルの湖は天地創造の神、ブラフマーが手にしていた睡蓮が地上に落ち、そこに水が沸き出したと伝えられる聖なる湖。歩いても簡単に一周出来てしまう程の大きさですが、周りは全てガートという沐浴場になっています。ヒンドゥー教徒はこの水で身を清めてから町にあるヒンドゥー寺院に参詣するのがお約束の様です。
ぼんやりとガートに座って沐浴する人々を眺めていたら、一人のおっさんに話しかけられお前にも沐浴の儀式をやってやると言われました。おでこに赤い印を付けられ、掌に花びらをのせられ、そこに何度も聖なる水をかけながらおっさんの言葉を繰返すように言われました。
「両親が健康であります様に」
「兄弟が幸せであります様に」
「商売が上手く行きます様に」
「いつも神様が近くにいてくれます様に」
こんな感じをひたすら繰返し…
「私は…」
「これらの幸せを得る為に…」
「あなた(神)に300ルピーのドネーションを…」
って、ちょっと待てオヤジ!!
危うく復唱しそうになった僕はここでおっさんに突っかかりました。いくらかは取られるんだろうなとは予想していましたが高過ぎだよ!しかも何で勝手に金額を決めるんだ!いくら神聖な儀式とは言え、明らかに僕をハメようとしたこのおっさんに僕はぶち切れ、猛抗議しました。払ったとしても10ルピーが限界だと言うと、お前は神を冒涜するのかくらいの勢いでじゃあ100ルピー払えと言って来たので、僕はこんな事しなくてもいいと10ルピーを叩き付けてその場を後にしました。
残ったのはおでこに付いた赤い印。
恐らくこれは何も知らずに初めてここにやって来た旅行者の誰もがやられる事。この印をつけたまま町を歩いていると「僕はハメられました」と言っている様な気がして不愉快になり、宿に戻って顔を洗ってから再び町に出掛けました。
気を取り直して町歩き!と、お土産屋がズラリと並ぶプシュカルのメインストリートを歩いていると、床屋のオヤジから「ヒゲを剃っていけ」と声をかけられました。値段は20ルピー(50円)。プシュカルでは嘘か本当かアーユルベーダのマッサージをやっている床屋が沢山あり、歩いているとドアの無い剥き出しの床屋から誘いの声がかかります。僕はただヒゲを剃るだけで椅子に座ったのですが、ひげ剃り終了後、そのままマッサージサービスに突入し、「多分、金取られるけど気持ちいいからいいか」と、そのままにしていたら最後に220ルピー(600円)も請求されました。
くっそーー!!!
インド人の腹が立つ所は吹っかけたり、ボッタくったりする金額が僕の予想を遥かに越えている所です。それはねーだろ!と言っても平気な顔。
ホントムカつくな〜コイツら!!!
ジャイサルメールでの苦い思い出から逃げる様にやって来たプシュカルで、まだ初日の午前中だというのに2度もそんな目に遭い、僕は完全にインド人不信症にかかってしまいました。


ここが総本山?
しかしこれでイライラしていては僕の負けなんだと思います。何と言ってもここはインド。左手でお尻を拭き、右手でご飯を食べ、ドアが開きっぱなしの電車に乗っているこの国の人々に僕等の常識は通用しない。ここは自分が合わせるしかないかのな。幸いこの1週間で山の様な嘘をつかれたので、段々と彼らの騙し方が分かってきました。
大きなトラブルには気を付けて、小さな事は気にしない。
これがインドを楽しむ為の心構えだと、これからは思う事にしました。
そんなこんなで朝から色々とありましたが、夕暮れ時のガートから眺める湖とプシュカルの白い街並は何もかも忘れさてくれるくらい奇麗で、静かな風景でした。沐浴する人がいたり、瞑想する人がいたり、物乞いがいたり、牛がいたり、ただボケーッと座っている人がいたり。この国の風景を眺めていると、自分がとても大きな檻の中に入れられたとても小さな存在の様に思えます。だから怒ったりイライラしても何の意味も無いし、何も変わらない。

明日は騙されません様に!